2011年7月6日水曜日

暴力の既視感


『Sonatine』1993年、北野武監督作品。音楽、久石譲 。

夜中、メトロの構内を急いでいると、まだ乾いていない血が点々と続いていた。
刷毛で描き殴ったかのような滑った跡があった。
血はホームの柱まで続いて消えていた。

柱に寄りかかるように座り込み、俯いて動かない男がいる。
片方の革靴が脱げ、腕はあらぬ方向にねじ曲がり、白いシャツの腹部は血で染まってる。
黒い鞄が開き書類が散乱している。

若い女がうつ伏せに倒れている。
その場で眠ってしまったかのように衣類に乱れたところはないが、
ビニール傘が背中深く突き刺さっている。

両手で口元を押さえた若い男がよろよろと歩いている。
指の隙間から血の泡を滴らせ、膝から崩れ落ちると手足を痙攣させ動かなくなる。

女子高生が笑いながら繰り返し繰り返し手首を剃刀で切りつけている。

点々と続く血の先には、形の整った小さな左耳が置かれている。

電車に乗ってドアが閉まっても、ホームの赤黒い染みを見続けていた。

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