2011年10月14日金曜日

曇天のエクソシスト


1973年 Mike Oldfield 『Tubular Bells』

横浜、北区、世田谷、各地で通常ではありえない放射性物質や
高い放射線量が計測されている。
除染の長期化は必至、汚染土の処理問題も解決の見込みなく、
かつて経験のない放射性物質の中での生活を強いられている。
震災から7ヶ月。
まだまだ問題は蓄積されていく一方だ。

3月11日の夕方、俺はまだ震災の輪郭がわからないまま、
四ッ谷から飯田橋を目指し外濠公園の土手を歩いていた。
まだ明るい時間に列をなし帰宅する多くの人たち。
異様な光景だった。


桜の季節には花見でひとがあふれる土手を、俺はiPod shuffleをポケットに急いだ。
iPodを使用するようになって4台目。
Walkmanから数えたら何台目(何代?)になるだろう。
いまはこの容量2ギガの小さなマシーンがお気に入りだ。
こいつは俺をどこにでも、どこまでも連れて行ってくれる。
どこへ行くときも一緒だ。

いつもランダムにしてパンツの右ポケットに入れている。
気分に合う曲がかかるまで曲を飛ばし続ける。
夜には夜のための。雨の日には雨の日のための曲を選ぶ。
その日、3月11日の外濠公園の土手では、いつものロックは合わなかった。
ハードロック、バラッド、レゲエ、ジャズ、パンク、、、
一番フィットしたのは、映画「エクソシスト」のテーマ曲だった。

自分でチューブラーベルズのイントロ部をリピートし、つなげた曲。
静かな、でも不穏な予感が漂うピアノの旋律が、曇天の空に鳴り響いている気がした。
iPod shuffleをポケットで操作し、その曲を繰り返し繰り返し聴いた。

震災から7ヶ月。
まだ愛機に入れた「エクソシスト」のテーマを聴いている。




ちなみに、エクソシストを観て何十年も経つけど未だ怖い。
重度のトラウマになってる。
怖いのは少女が悪魔に取り憑かれて変貌するシーンではなく、
神父との戦いのシーンでもない。
怖いのは少女の部屋に向かう廊下を歩くシーン。
カメラがゆっくりと少女の部屋のドアに近づいていく。
ドアが大きくなってくる。
どんどん大きくなってくる。
ドアの前に着き、ドアを開け、、、ここが怖い。
怖いよね?

2011年10月10日月曜日

Take A Ride


2003年 Jeff Beck『Jeff』から「Take A Ride」
激渋スライドギターに痺れろ。


彼女はこれまで数えきれないほど多くのボトルを空けてきた。


目も眩むようなきらびやかな。


きめ細やかな。
熱く火傷をしそうな。
無味乾燥な。


愚かなものも。
豊かなものも。
飲み干し、彼女自身の色を変えた。


照明に翳したグラスの中で彼女は踊るように虹色に変化する。


割れたボトルの破片がちくっと胸を刺すが、それは酒の肴。


俺は今夜も熱く柔らかいグラスのふちに口づける。


喉を流れ落ちる彼女は俺を溶かし、無口にする。